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複雑化する人と動物の福祉問題

Human-Animal Bond(人と動物の絆)という言葉が社会においても広く知られるようになり、わたしたち人間とペットとの関係性が大きく変化しています。
そのため、今までは人間だけ、動物だけの問題として片付けられていた、動物との共生によってもたらされる問題が浮き彫りになってきています。

地域社会で起こりうる問題

家庭内暴力 (DV)

ペットが何らかの虐待被害にあっている場合、その他の家族も被害にあっている可能性が高いとされています。動物病院やシェルターのスタッフは、動物が疑わしいケガをして来院した場合、家庭内暴力の疑いを地域の児童保護サービスや支援センターなどに報告することが重要となります。

多頭飼育崩壊 (アニマルホーディング)

十分な世話ができないほど多くの動物を引き取り飼育をしてしまい、動物を溜め込んでいる本人はその状況の深刻さに気づいていないことが多いです。多くの動物たちが不衛生な環境で飼育されており、動物と人間の両者の福祉に影響します。アメリカ精神医学会が出版している「精神障害の診断と統計マニュアル・第5版」(DSM-5) によると「ためこみ症」は精神疾患のひとつとして認識されています。

高齢者と動物

高齢化の進む現代において、高齢者とペットの問題はますます注目されています。飼い主が高齢の場合、老人ホームや介護施設等に入ることでペットの世話をする人がいなくなってしまい、最終的に保健所で処分されてしまうケースもあります。また、ペットを大事にするあまり自分の健康問題を後回しにしてしまうなどの問題もあります。

動物看護師の役割

国家資格として認定されることで、動物看護師はこれまで以上のスキルや知識を求められるようになります。動物とその飼い主、両方の福祉向上のために関連するヒューマンサービスや児童保護、ソーシャルワーク等の専門家と協力して社会問題に取り組んでいく必要があります。

このプログラムへの参加を通じて、人と動物にまつわる問題についての知見を広げ、適切に対処できる動物看護師を目指していきましょう。

執筆者の紹介

清水優那先生
専⾨:獣医療ソーシャルワーク/人と動物の関係学
所属:Master of Social Work(MSW)
社会福祉学修士/獣医保健看護学士
オーストラリア・アデレード在